2008 本日記

2008 本日記

今年読んだ本たち。(ネタバレあり、注意!)

★★★★★・・・・・最高!!何度でも読みたい本!
★★★★・・・・・・なかなか面白い、おすすめ♪
★★★・・・・・・・まあ、並の面白さ
★★・・・・・・・・不発、暇つぶし程度
★・・・・・・・・・時間の無駄でした、残念┐(´д`)┌
(☆は★の2分の1を表してます)

㊵義経  

宮尾登美子     ★★★

小説ではなかった。著者が語り手になり「このように伝えられていますが、実際はこうではなかったでしょうか・・・」といった感じで、保元の乱から壇ノ浦の戦いそして義経が自害するまでを語っていく。この人はこの時代を語るのが好きなんだなー、と思わせるやや趣味的な内容。義経が実際は反っ歯だったと書いてあって、わたし的にはショック。やっぱりタッキー顔じゃないよねえ。

㊴冬の鷹

 吉村昭      ★★★

解体新書(ターヘルアナトミア)を和訳した前野良澤の訳業とその背景を描いた作品。一緒に和訳に務めた杉田玄白との対比が見所。 前野良澤がオランダ語を苦心して訳していく作業や、学問をしたい、名声はいらないと言い切る姿はまさに冬の鷹だ。医学会に貢献して門下を増やし富も名声も得た玄白と、人生の終末を雪の吹き込むようなあばら家で過ごした良澤。目立ったエピソードがあるわけでもなく、とにかく地味な小説だが、最後まで飽かずに読み進められたのは著者の力量によるものだろう。インパクトのある小説をつい求めてしまうが、たまにはこういうのもいいかなと思った。

㊳タイル
  柳美里     ★★☆

離婚によって一人暮らしを始める事になった男が主人公。この男は性的不能になった事がきっかけで離婚することになるのだが、一人暮らしのマンションの一室で現実と妄想の狭間に自分を置き、床にタイルを貼る事を目的にしながら生きている。そのマンションはオーナーの柄本によって盗聴されており、柄本は盗聴器から聞こえてくる男の奇妙な行動に興味を抱き始めて・・・と、まあこんなストーリー設定だが、うーん正直いまいちだった。登場人物の行動や考えにほとんど共感出来ないんだよね。唯一、柄本の盗聴や自分の老いや性に対する思いは分かるような気がしたけど、なんか人物達の行動に一貫性がないというか、全体的にちぐはぐな印象が残ってしまう小説だった。この著者の作品は初めて読んだと思うけど、他のは面白いのかなあ。自分の感性と合わないとは思わないんだけど・・・。

㊲犯人に告ぐ(上下)
  雫井脩介    ★★★★

神奈川県警の巻島史彦は5歳男児の誘拐事件の指揮をとる事になるが、警察の対応の悪さもあり、男児は殺害され、犯人の「ワシ」も取り逃がしてしまう。その記者会見場で巻島は記者相手に切れてしまい左遷される。6年後、男児を狙った連続殺人事件が発生し、捜査に行き詰まった本部長は巻島を抜擢した「劇場型捜査」を開始する。
前半、登場人物の輪郭がはっきりしない為かややぼやけた印象の部分もあったが、後半は巻島の魅力が全面に出、かつクライマックスへの盛り上がりも十分に読ませてくれた。脇役の津田、本田を暗躍させる部分がしっかりあったら更に満足できたかも。トヨエツが主役(なかなかの適任と想像する)の映画も観てみよう。

㊱風が強く吹いている
  三浦しおん   ★★★★

一言で言うと、箱根駅伝を目指す若者達の青春ストーリーだ。竹青荘で暮らす個性豊かな住人達が、清瀬と走が出会った事をきっかけに、駅伝へ向けた厳しい練習に巻き込まれて行く。清瀬は高校時代に故障した足に爆弾を抱え、また走は輝かしい経歴がありながら高校陸上部で暴力事件を起こして退部した過去を持っていた。清瀬は走の走りに自分の理想が体現されていることに驚き、箱根への思いを強くする。
正月になったら箱根駅伝を観なくちゃ!と思ってしまう小説だ。出来るなら予選会も含めて陸上関連の雑誌まで買ってみたい気分だ。箱根を目指す若者達の様々なドラマを実際に感じてみたい。ただ、この小説は面白いんだけど、全体的に少女漫画の匂いがする。男子の男臭さや無骨さのようなものが感じられない。無味無臭じゃ、物足りないんだよね。映画化も決まってるらしいけど、まずは正月、男のドラマを観よう。

㉟死に向かうアダージョ
  小池真理子   ★★★

男には妻がいた・・・から始まるこの小説は、不倫関係にある男女が企てた心中を発端として、登場人物たち各々の生に向き合う姿が描かれている。アルビノーニの「アダージョ」に包まれ、雪山の廃屋が生を際立たせる、うっとりと陶酔したくなるような設定である。
心中を企てた二人は死に向かって、まるで楽しむかのように雪山の廃屋でワインを飲んだり荘厳な音楽に酔ったりしながら過ごす・・・確かにある意味ロマンティックなのかもしれない。この2人、死ぬ必要はないといえよう。男が妻と別れるか、愛人と別れれば済む話なのだから。ただ、この2人は生に対する執着がなかったから、不倫と言う設定に自分たちを追いつめ、死に魅せられてしまったのだろう。しかし、心中は予定通りにはいかなかった。ここから、千尋(愛人)の生に対する執着が描かれる。ここからが面白い。あんなに死に憧れていたはずの女が、もがき、あがいてなんとかして助かろうとする。きっと作者はこれが描きたかったんだろうな、と思う。モノクロだった小説に徐々に色が付き出す感じ。この変化を楽しむ小説なんじゃないかな。

㉞チーム・バチスタの栄光
  海堂尊     ★★★

ずっと気になっていた小説をやっと読む事が出来た。
東城大学医学部付属病院の「チーム・バチスタ」は心臓移植の代替手術であるバチスタ手術の専門チーム。華麗なる成功記録の中、原因不明の術中死が発生する。調査を依頼された神経内科の万年講師、田口がスタッフ達の聞き取り調査をはじめるが・・・

前半、登場人物たちを「聴取」という形で語らせ、人物像を固めて行く手法は分かりやすく好感が持てる。しかし、後半の厚労省の役人、白鳥が登場してからは一気に展開するというよりも、落ち着きが無く空回りする感が強くて正直がっかりした。結末も同様で、さらに意外性の無い人物が犯人でまたもやがっかり。白鳥のキャラ設定に問題があるのは間違いない。後半、書き直そうよ、もったいないから。ドラマにして、結末が変更されてるパターンだったら観てもいいかな。

㉝殺人の門
  東野圭吾    ★★★

ああ、またこのパターンかあ・・・と読んでいる途中に思った。東野作品「手紙」パターンだ。つまり、本人の意図とは関係なく、本人の周囲、環境がガラガラと崩れ、どんどん悪い方へ流されて行く・・・転がるように不幸になるパターンだ。読むのを止めようと何度思ったか。それくらい主人公が哀れで情けなくて、みていられない。

ストーリーは歯科医の息子でおぼっちゃまだった主人公が、父親の浮気、両親の離婚、父親の愛人問題と借金(愛人にいれ込んで使い込み)、によって不幸な少年時代を過ごすところから始まり、就職してからも友人の誘いに乗ってねずみ講もどきの手伝いをすることになり、そのせいで職を失い、結婚したかと思えば妻は浪費家で、散々貯金を使い込まれたあげくに離婚→なぜか慰謝料を払うはめになり・・・とどこまでも不幸が続く。しかしそれは偶然の不幸ではなかった・・・、というもの。
読んでいてつらい、スッキリ感のない小説だったな。

㉜黄金を抱いて翔べ  
  高村薫     ★★★★

日本推理サスペンス大賞受賞作。
大阪を舞台に、銀行地下の金塊を強奪する計画をすすめる6人の男。変電所を爆破させる為のダイナマイトを強奪したり、密告者がいたり、命を狙われ続ける元工作員の仲間がいたりして、計画は思うように進まない。金塊は手に入るのか。

この小説を読むのは何年ぶりだろう。おそらく10年近く経ったのではないか。やっぱり読ませてくれるなーというのが第一声。しかもこれが著者のデビュー作というのだから驚きだ。そしてこのハードボイルド感は女性が書いているとは思えない。

まず壮大なスケール設定がいい。登場人物のキャラもそれぞれ確立されていて、ストーリーに厚みを与えている。主人公、幸田とモモの友情(愛情か?)も一見の価値ありだが、幸田の経歴がさらっとしか描かれてなくて残念。もっと濃く描かれていたほうが、強奪に関わる理由付けにもなるし、後半のモモとの関係も思い入れられる(自分が)ってもんだよね。心の交流的なものがやや足りないのがマイナス点か。それを差し引いても、描写の細かさが想像力を刺激してくれるいい作品だ。

㉛夜は短し歩けよ乙女
  森見登美彦     ★★★☆

黒髪の乙女と彼女に恋する大学生の二人の視点から、彼らを取り巻く風変わりな人物達の、お祭り騒ぎのような日常が綴られている。印象的なのは文章中の言葉遊び。「学園祭とは青春の押し売り叩き売り、いわば青春闇市なり!」と彼が語り、パンツ総番長(願掛けのために長期間パンツを履き替えない男)が恋を語り、真夏のこたつで火鍋と呼ばれる激辛鍋で古本を争奪したりして、それぞれが個性を発揮し青春を謳歌している。
そーか、青春というのはこんな感じだったな・・・とニヤニヤしながら読んでしまった。ストーリーが気になって先を急いでしまう小説と違って、ゆっくり楽しめた。登場人物達の純粋さにあたってしまい、恋がしたいな、と思ってしまう本でもあった。本書の評判は良いようだが、著者はこのまま、この道を進んで行くのだろうか。このままだともったいない気がする。わたしは飽きる、たぶん。

㉚淀どの日記
  井上靖      ★★★
戦国時代、織田信長の姪であり、豊臣秀吉の側室である茶々(=淀どの)目線の歴史もの。
淀どの日記というだけあって、合戦の状況や背景などはあまり詳しく書かれていない。茶々の生涯の交友関係や女の立場から見た当時の城の様子、他の側室たちとの確執などがメイン。秀吉の死後は嫡子秀頼を守るためなら何でもする母の姿が印象に残る。
井上靖という人は、主人公茶々に対してどのように思っていたのだろう。描かれているのは嫉妬深く、気位が高く、頑固なへそまがりの権力者、といった女性でおよそ魅力的ではない。ただ、何があっても動じない肝の据わり方には感服するが。
そして、徳川家康は冷酷非道な悪人として登場する。茶々から見た家康だから敵人には違いないが、とにかく登場人物が魅力がないのがこの小説の特徴といってもいいかも。茶々が秀吉の子を産んだ謎(浮気説など)については言及されていない。茶々の話なんだから、そこはつっこんでもらわないと、と思うんだけどね。

㉙名もなき毒
  宮部みゆき     ★★★
今多コンツェルンの娘婿の杉村。彼が「原田いずみ」というアルバイトを解雇したことから、青酸カリで殺害された祖父を持つ高校生、美知香と出会う。人のいい杉村は事件に首を突っ込んで・・・。正直、前評判ほどではなかった。まとまり過ぎていて意外性がないし、なんかぱっとしない。同じ主人公が登場する「誰か」の方が印象に残る作品だ。ミステリ小説で青酸カリを使った殺人なんて新しくもないし、原田いずみというトラブルメーカーの存在はスパイスにはなっても主食にはならない感じで物足りない。犯人の動機も、後付けって気がしてならない。うーん、著者の書きたい意欲が伝わってこないんだよなあ。宮部みゆきに期待しすぎたからかな。

㉘サウスバウンド
  奥田英朗      ★★★★
2006年本屋大賞第2位の作品。小学6年生の漫画好きな二郎が主人公。元過激派の父(無職)、喫茶店を営む母、不倫中の姉、妹の5人暮らし。二郎は非常識な父親に翻弄されたり、不良中学生に目をつけられ、波乱の生活を送っている。更にアキラおじさんが現れてからは内ゲバの片棒を担がされたり、マスコミに追われたりと苦労が絶えない。第2部では家族で沖縄の西表島に移住し、父親がリゾート開発会社や警察と対立するなかで、徐々に父親の素性が明らかになり二郎も父親に心が近づいて行く。
ただのひねくれ屋だった父親が、第2部からは頼もしく、その言動が痛快に感じられる。家族も島でいきいきと暮らし始める。父親の名言に★4つ。世間的には受け入れられなくても、言いたい事は言う姿勢には学ぶべき点あり。トヨエツ主演で映画化されているがトヨエツはちょっとイメージ違うと思うんだよなー。もっと野性的で体のデカイ凶暴な感じで、ユーモアとちょっと哀愁があって・・・のイメージだよね・・・プロレスラーのような・・・蝶野とか武藤あたり?もしくは三沢?(笑)

㉗第三の時効
  横山秀夫      ★★★★
横山秀夫、好きな作家の一人だ。「半落ち」「クライマーズ・ハイ」「看守眼」「出口のない海」、どれも良かったが、本作品も短編集にしては期待以上だった。F県警強行犯シリーズの第一弾作品である。とにかく過不足ない文章が心地よく、刑事たちの覇権争いや、人物たちの生々しい葛藤もストレートに入ってくる。6つの短編のうち「密室の抜け穴」「第三の時効」が特にいい。スリリングで緊迫感があり、ラストのどんでん返しはミステリの醍醐味を十分堪能させてくれる。本書の解説(池上冬樹)もいい。そうそう、解ってるねえ〜と頷く解説。「安易な感動を打ち出さない、徹底したリアリズム」その通り!

㉖果てしなき乾き
  深町秋生      ★★
第3回「このミス」大賞作。麻薬を自室に残して消えた娘を捜す、元刑事の父親。娘と関わらずに生きて来たツケなのか、娘の闇に引き込まれて・・・。といった感じのストーリーだが、文章が慣れるまで読みにくい。最後まで読ませるストーリーではあるが、主人公の父親が破滅型の人間で、読んでいて不快。

㉕王朝序曲 (上下)
  永井路子      ★★★☆
八世紀末の平城京、長岡京、平安京時代の桓武天皇と平城天皇(皇太子安殿)との確執を、嵯峨天皇(加美能親王)の元で奔走する藤原冬嗣、冬嗣と対立しながらも、お互いを認め合う兄の真夏を軸におき描いている。天皇を呪詛した罪で殺されちゃったり、怨霊に取り憑かれて死にそうになったりと、まるでオカルトな時代。滑稽に思える様々なエピソードも、ずーっと現在まで繋がっている歴史なんだと思うと感慨深くもなる。ちょっとずつ登場する坂上田村麻呂や空海、最澄といった人物についても興味をそそられた。研究者批判をしている部分もあったりするが、永井作品読みやすい。

㉔山霧 (上下)
  永井路子      ★★★☆
毛利元就の生涯を通して、おかたとの夫婦の絆や大内家、尼子家等との勢力争いを描いた作品。戦国時代初期の安芸、出雲地方での戦略や合戦の様子がとても解りやすく、読み進めやすい。先日読んだ瀬戸内作品とは対照的に感じた。永井作品は読者に読みやすいように、かなり配慮されている。文章がやわらかくて物足りなく感じる面もあるが、歴史物は読みにくいモノが結構あるから、気軽に読むには良い。わたしの好きな義経時代の作品もあるからチェックしましょう。

㉓白道
  瀬戸内寂聴      ★★★
西行の生涯を史実に基づいて描かれた小説風のノンフィクション。正直言って、難しい。興味本位で簡単に読める内容ではなくて、西行の歌に興味深い人か、歴史やその時代背景に知識がないと読み進められない。白河法王と待賢門院の関係や鳥羽、崇徳天皇との確執などは興味深いが、西行が出家した理由に興味を惹かれている著者とわたし自身に隔たりを感じた。しかし、自らも出家の道を選んだ著者の言葉にはうなづかされることも多く、特に印象に残ったのは「人は誰でも何時でも、そうとしか生きられない生き方をしている。人を殺そうと思って生まれてくる者もなければ、人を苦しめたいと願って生きる人間もいないのだ。殺そうと思っても殺せるものでもなく、生きたいと切望しても生ききれない場合もある。そうなるように自分の生き方を選んだのは自分の性格であろう。運命などではない。人は生きているすべての時間に自分の生を選び続けている。」というくだりだ。でもまだ消化できない内容も多く、わたしにとって時期尚早といった印象。再びこの本を手に取る日に自分がどう変っているのか楽しみにしよう。

㉒ジョゼと虎と魚たち
  田辺聖子       ★★☆
8つの短編集。田辺作品は初めて読んだが、主人公に共感しにくくて、すっきりしない感じ。男と別れる(あるいはその後すぐに新しい相手を見つける)みたいなストーリーが多かったが、著者との感性の違いなのか年代の違いなのか、腑に落ちない。イラストも(本くに子)良くない。表題の作品は映画化されているが、23ページしかない・・・どんな映画なんだろ?

㉑手紙
  東野圭吾       ★★★☆
両親も親戚もなく、経済的理由から大学進学を諦めかけている弟のために、空き巣に入るつもりだった兄の剛志。ところが思いがけなく家人に見つかってしまい、殺人を犯すはめになってしまう。刑務所に入った剛志から毎月送られてくる「手紙」に弟、直貴は苦しめられる。東野作品の中では地味目のストーリーだが、兄との絶縁を決心するまでの直貴の心の揺れがよく描かれている。再会を果たすラスト14行、グッとくる。

⑳ワイルド・スワン (上下)
  ユン・チアン     ★★★★
中華民国成立から文化大革命、毛沢東死去までの時代を著者の祖母、母、著者本人からみたノンフィクション。まず驚いたのは、毛沢東ってこんなに悪人だったのかということ。「思想家」という仮面を着けた大悪人として描かれている。独裁政権下で、人民同士を憎み合い監視し合うように仕向け、「階級敵人」を場当たり的に作り出して人民に恐怖を植え付ける。誰も信用できない、次は自分が標的にされるかもしれない.....と誰もが恐れ「毛沢東 万歳」と叫ぶ。これが近年までの中国の姿なのだ。そしてこのノンフィクションが解りやすく、膨大な情報が冷静な観察眼で記録されていることがすばらしい。記録としての価値に★4つ。

⑲最後の恋 (上下)
  北川悦吏子      ★★★
1997年のTVドラマのノベライズ。ヒットメーカーの北川悦吏子脚本だったが、当時ドラマを見逃していた。この人のドラマは、なんといっても「愛していると言ってくれ」「ロングバケーション」が印象深い。ロンバケも相当話題になったが、わたしはトヨエツの「愛している〜」の方が断然好きだ。思いが伝わらない二人がもどかしくて切なくて...トヨエツ、よかったなー♡   で、「最後の恋」はストーリーのテーマは「再生」ということなんだけど、うーん、まあドラマで見れば面白いんだろうな、とは思う。やっぱり脚本を小説化するのは難しいのだろうね。ほとんど台詞だけで話が進んでしまうし、「アキは白いかわいいバッグを持って出かけて行った」とか、「彼女は美しい笑顔で振り向いた」なんて、不自然な文章が多くてしらけてしまうこともしばしば。小説化した人の力量なのかな。さらっと読んでお終い。ハッピーエンドでよかったよかった、パチパチ。

⑱その日のまえに
  重松清        ★★★★
その日、つまりその人の命が終わる日。余命を告げられた後、その日を迎えるまでに自分の生きた意味に気づくことができるのか、身の回りをきれいにして、覚悟を決める事ができるのか...。普段は目をそらしている命の期限について、お前はどうなんだと、突きつけられる。職業柄たくさんの人の死は見てきたつもりだったが、不覚にも泣いてしまった。わたしが知っている死は物理的な事がほとんどで、生きた、あるいは死の意味についてこんなに迫られたことはなかった。わたしは死ぬまでに何ができるのだろう。そして大切な人が迎える「その日」までに何ができるのだろう。漫然と時間を消費してはいけないと諭された。

⑰町長選挙
  奥田英朗       ★★★
精神科医伊良部シリーズ。また読んでしまった。が、4つのストーリーのうち、3つは有名人をモデルにした話で新鮮味がなく、先が読めてしまう感じでいまいち。「町長選挙」は伊豆半島にある島の町長選挙に巻き込まれる公務員の話。東京から出向してきた宮崎は、政策もなく現金が露骨に飛び交う過激な選挙に戸惑う。島民を二分して戦う選挙の行方は...、というストーリーだが、伊良部の活躍が少なくて、満腹感がない。...わたしはいつの間に伊良部ファンになったんだ?もっと伊良部の奇行がみたい。

⑯けものみち (上下)
  松本清張       ★★★☆
2006年、米倉涼子主演でドラマ化されたベストセラー小説。脳軟化症(脳梗塞のことか?)の夫を養う為に旅館の住み込みとして働く民子。空しさの中、ある男にそそのかされ夫を殺害してしまい...ここから民子の本領が発揮される。政財界の大物、鬼頭の女となり「けものみち」に踏み込んでいく。民子は鬼頭に気に入られ、屋敷内でのポジションを固めていくが、実際に鬼頭がどのような地位にいるのか知らされていないため保身に奔走する。また一方では小滝に執着し嫉妬に苦しめられるが、女として第二の人生を謳歌する。刑事久恒の執拗な捜査は、やがて鬼頭らの権力によってつぶされてしまうが、久恒を正義とは描かず、小悪党化することで悪は誰(何)なのか、必要悪とは何か考えてしまう。けものみちの恐ろしさが徐々に盛り上がるクライマックス。残酷なのは男か女か。

⑮空中ブランコ
  奥田英朗       ★★★★
直木賞受賞作。精神科医の伊良部が患者に嫌がられながらも、いつの間にか患者の心に入り回復に向かわせてしまう物語。伊良部の設定がかなり気持ち悪くインパクト大。心が弱っている患者達を相手に、突飛な行動(治療?)と心の開き方を自ら示していく事で、患者本人に回復への道を気付かせる。義父のカツラを剥いでしまいたい衝動に駆られる婿の苦しみを描いた「義父のヅラ」は読んでいる方がムズムズしてくる。秀逸、といっても良いのでは。こんな医者はいないだろうと思う反面、案外伊良部になら心の中を見せてしまうかもしれないなーと思ってしまった。周囲の目を気にしない、やりたい事を子供のように無邪気に突き進む、なんていうと素敵だけど、伊良部は気持ち悪いんだよな。でも続編も読んでしまいそう。

⑭赤朽葉家の伝説
  桜庭一樹       ★★★
鳥取の旧家に生きる三代の女達、特に「千里眼奥様」と呼ばれた万葉を中心に話が展開する。第一部の万葉が「辺境の人」に置き去りにされてから、自分のルーツが大陸から来た人々と関係あるのではないかと思うに至る成長の過程は興味深く、また高度成長期の製鉄所と「神話」の対比も面白い。二部の毛毬の人物設定も意外。暴走族(レディース)「製鉄天使」のヘッドとして君臨し、中国地方を制圧したかと思えば、あっさり漫画家に転向して自分の半生を投影した漫画で一世を風靡する。まあリアルなストーリーとは思えないがそれなりに楽しめる。著者の得意分野なのだろう。第三部は毛毬の娘瞳子が赤朽葉家の歴史を振り返り、自分の生き方を模索する話。三部目は必要だったのか、疑問。間延びした感は否めないし、もっと万葉のルーツや力にこだわって描いた方が充実感があったんじゃないかな。逆に豊寿の自殺のエピソードはなくてもいいんじゃないかと思うくらい弱い。締めがいまいちでちょっと残念。

⑬ハッピーエンドにさよならを
  歌野晶午       ★★★☆
ハッピーエンドでは終わらない、11の短編集。インパクトの強い作品が多い。特に「サクラチル」のラスト3ページの母親の告白は、母として苦労を重ね耐えてきた末がこうなのか、と暗澹たる気持ちにさせられるし、なにより生理的に気持ち悪い。「尊厳、死」はホームレスの話だが、人の善意、悪意の違いとは何だろうと考えてしまう。そんなに社会的要素が強い作品ではないがブラックユーモアというよりは、底意地の悪さがうかがえる。どれも後味が悪い。本のカバーイラストもよく見ると不気味。

⑫容疑者Xの献身
  東野圭吾       ★★★★
本格ミステリ大賞、直木賞を受賞した「探偵ガリレオ」シリーズ第3弾。別れた夫を殺してしまった靖子を隣人の高校数学教師の石神が助け、警察の捜査を攪乱していく....。ドラマを見ていたせいで、どうしても湯川が福山雅治にしか思えず、頭の中では(勝手に)すっかりドラマ・ガリレオが映像化されてしまった。数学教師はドランクドラゴンの塚地某、靖子は安田成美あたり、もしくは小泉今日子?工藤は寺島進っていうのはどうかな、人の良さそうな感あり男の色気ありってことで。今年の秋に映画化されるらしい。キャストが楽しみだ。石神の策略が暴かれるラストは、すっかりやられた〜って感じ。感服っす。文章も簡潔で読みやすいところがいいよね、くどさがなくて。著者の性質なのか、相当推敲してるかってことだよね。面白かった。

⑪天璋院篤姫 (上下)
  宮尾登美子      ★★★☆
今期大河ドラマ「篤姫」の原作本。篤姫の波乱の生涯を描いた作品。著者、初めての歴史ものとは思えないほど読みやすく、歴史小説にありがちの「この事実はこうして調べて解った」風な注釈も少なく、またエピソードのつながりもスムーズで、ストーリーにとぎれ感が少ないところがすばらしい。裏を返せば、かなりオリジナルが入っているということだろうが、読み物としての完成度は高いと思われる。特に天皇家から嫁いでくる和宮との確執はまさに女の戦い、大奥の醍醐味ともいえるが、ドロドロ感は予想に反して少なく、篤姫が人道的に生きる姿勢がよく描かれている。それにしても13代将軍家定の情けなさ、15代の慶喜の狡猾さ等々、男子が非常に酷い、悪い。事実よりも相当酷く描かれているのは意図的なんだろうけど。

⑩閉鎖病棟
  帚木蓬生       ★★★
現役の精神科医執筆による山本周五郎賞受賞作。精神科病棟の患者達の交流と、それぞれの持つ過去との戦いを患者目線で描いている。「まさに琴線に触れる小説だ」と本の帯に太字で強調されていなければ、もうちょっと心に響いたかも。気になるのは、精神科病棟をきれいに描き過ぎてるって事。著者は現役の医師だけに、あんまりリアルに描くと不要な差別や偏見を助長しかねないと危惧したのか、患者の病状についても表面的すぎるし、もっと専門的に踏み込んだほうが人物像も厚みがでたんじゃないかな。全体的に夢の中で起こっていることのような、そんな微妙な現実感。

⑨OUT
  桐野夏生       ★★★★☆
1998年日本推理作家協会賞を受賞した作品。深夜の弁当工場で働く四人の主婦が殺人、死体解体に手を染めていく過程と、その後始末に苦しめられ更に命まで狙われてしまうという話。まず四人の主婦の設定が興味深い。幸せな境遇を持つ者はなく、現在の生活から抜け出したいと焦燥感を持ちながらも、毎日淡々と弁当工場へ向かう主婦たち。いかにも何か起こりそうな予感と共に読み進み、まさに期待通りの展開。死体の解剖は生々しく血の臭いが漂ってきそうなくらい。主婦の連帯感ってスゴい。後半は主人公、雅子と佐竹の戦いにしぼられていくが、佐竹の設定にはやや現実味がない気が。雅子が佐竹に心を許していく過程は女としてなんとなく理解できるけど。ドラマ版のキャストで宮森カズオ役が伊藤英明、というのには笑ってしまった。映画やドラマの評価は低いようだが、どのように映像化されているのか興味ある。久しぶりに徹夜で読みたくなる本に出会った。

⑧死の泉
  皆川博子       ★★★★
第二次大戦下のドイツ、ナチの施設レーベンスボルンが舞台。前半は文学的で、耽美的なくどくどしさがあるが、狂気の医師クラウスの描写が後半への期待を誘引する。神話、カストラート、フェルメール、人体実験、と様々な要素が小説全体をじっとりとした不穏な空気で包んでいる。後半はフランツとエーリヒ、ゲルトとヘルムートのやおい的要素が含まれていることは否めないが、クラウスの狂気的な暴走がストーリーを押し進め、隠された事実が明らかになっていく過程には息をのむ。最後の「あとがきにかえて」のオチも、昔のホラー映画を思い出させてわたし的にはマル。でもあと一歩、浸れなかった理由はゲルトはなぜ狙われたのか、ブリギッテはなぜ殺されたのか、等々疑問が残るからか。

⑦ホームレス中学生
  田村裕        ★★★☆
現時点で125万部突破といわれている、「麒麟」田村氏の貧乏な少年時代のエッセイ。突然父親から「解散!」宣言が出され、一家離散の田村家。公園生活での子供や野良犬との戦い、友情、母親への思いが綴られている。
素直に面白かった。段ボールは食べたくないが、田村少年の純粋な心、行動の無鉄砲さがちょっとうらやましい。つい田村少年に感情移入してしまい、空腹を覚えてしまった(笑)

⑥眉山
  さだまさし      ★★★
松嶋菜々子主演で映画化された作品。徳島を舞台に母娘の関係と母の人生を描いている。男性の著者が、母娘の関係に焦点を当てている点は新鮮といえる。ストーリーの軸はいいが、もう少し厚みが欲しい。例えると、味は濃いけどコクのないスープ、って解りにくいか。映像化されて設定やエピソードが追加されると面白くなりそう。映画はまだ見ていないので、そのうち。

⑤平家物語の女たち
  宮尾登美子      ★★★
今期のNHK大河ドラマ「篤姫」の原作者が、自身の著書「宮尾本 平家物語」を執筆した際の、回想録的な内容になっている。平家物語に登場する、名もなき女性たちに焦点を当て、現代の女性との比較や、平家物語への熱い思いが綴られている。
池宮彰一郎作「平家」と読み比べたが、ストーリー自体の解釈の違いや、登場人物への思いの相違が多かった。平家物語を研究している研究者は数千人はいるといわれているから、その数だけ平清盛がいて、源義経がいるのだろう。それにしても、義経かなりステキ。

④リセット
  北村薫        ★★★☆
北村薫作品、初めて読んだ。
知らなかったが三部作のひとつらしい。最初は読みにくいと感じたが、
いつの間にか静かに引き込まれていた。
関連作も読んでみよう。

③十六の話
  司馬遼太郎      ★★★
日本史や自身の幼少時のエピソードを交えたエッセイ。
内容が堅くて、本を開くと眠たくなってしまい、
興味のある箇所しか読めなかった。次回挑戦。

②天使の卵
  村山由佳       ★☆
映画化されていたので手に取ってみたが、気分転換程度の内容。
ロマンチストでないわたしには不向き。

①天使の梯子
  村山由佳       ★★
「天使の卵」の続編。一緒に借りたので読んだ。
前作よりは登場人物が掘り下げられた印象。でも浅いかな。不満足。

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