2009 本日記

2009 本日記

今年読んだ本たち。(ネタバレあり、注意!)

★★★★★・・・・・最高!!何度でも読みたい本!
★★★★・・・・・・なかなか面白い、おすすめ♪
★★★・・・・・・・まあ、並の面白さ
★★・・・・・・・・不発、暇つぶし程度
★・・・・・・・・・時間の無駄でした、残念(;ω;)
(☆は★の2分の1を表してます)

⑩さまよう刃  東野圭吾
 ★★★

娘を殺された男が犯人を追い、警察よりも先に犯人を捕らえ復習を遂げようとするストーリー。最近、寺尾聡主演で映画化された。
一人娘の絵摩が花火大会を見に行った後帰って来ないことから事件は始まる。父親の長峰は妻に先立たれ、絵摩との二人暮らしだった。絵摩はレイプ、窃盗、暴行等の常習歴がある鬼畜ともいえる若者たちに襲われ、殺されたのだった。そして長峰の元に警察も掴んでいない犯人の一人の名前、住所の情報が流されてくる。長峰は一人でその住所に駆けつけ、絵摩がレイプされている様子が撮影されたビデオを見つけてしまい、逆上した長峰はちょうど帰宅した犯人を刺殺する。そして、もう一人の犯人に復習すべく追跡と警察からの逃亡が始まる。
犯人の男たちがあまりにも残酷で非道なので、長峰に復習を遂げて欲しい気持ちで読んでしまう。犯人が警察に捕まったとしても未成年だということもあり、遺族が望んでいるような刑は受けなくて済むからだ。追跡と逃亡が同時に課せられる主人公の設定もいいが、途中長峰に協力することになる和佳子も、追跡を助ける重要な存在となる。映画化もされた小説なのに、何故★が3つなのかというと、上手くまとまっちゃってる所が面白くない・・・かな。書き慣れてる感じが出過ぎてるというか伏線の張り方とか、冒険がないというか・・・上手く言えないけど盛り上がらなかったな。追跡・逃亡劇なのにスピード感がいまいちだったのもマイナス。ただわたしも一気に集中して読めなかったから、読み方にも問題があったのかも。


⑨天上の青(上下)  曾野綾子
 ★★★★☆
15年ぶりに再読した。さすがに「確か、面白かったはず」位の記憶しかなかったのだけど、その記憶は正しかった。今でも、というより更にわたしの好きな本になっていた。
ヘブンリーブルー(天上の青)という品種の朝顔を庭で育てている雪子の元に、一人の男が声をかける。宇野富士男というその男は、後に殺人や強姦等の罪を重ねる凶悪犯になるのだが、雪子の前では何故か大人しく素直だった。富士男は路上でナンパを繰り返し、女をホテルへ連れ込み、気に入らない理由があれば殺して捨てる。強欲だ、淫乱だ・・・だから生きている価値がないから殺した、という言い分だ。富士男は犯行の合間に雪子を時々訪ねる。雪子はクリスチャンだ。唐突に訪ねてくる富士男を受け入れ、話しを聞き、富士男が今までに聞いた事のないような神の話しや心の話しをした。やがて富士男の罪が暴かれ、彼は死刑の判決を受ける。罪を悔いる事のない富士男は親兄弟よりも雪子を心の拠り所とし、二人の手紙のやり取りがこの本の核となっている。わたしがこの本を好きな理由は、雪子が誰に対しても公平、誠実であろうとする姿や、どんな状況下でもその中の幸福に気づく心を持っているところだ。そして、雪子が富士男の最後の望みに答えることが、彼に死への引導を渡す事になるのだ。この場面の描写がシンプルながら力強くて、最も印象に残る。生きる姿勢を正される、そんな本だ。

⑧告白  湊かなえ
★★★☆
本屋大賞受賞作。自分の娘を殺した犯人がこの中にいると、生徒たちに向かって話しかけて行く教師・・・ここから物語は始まる。そして語り手を代えながら、密かに進行して行くいじめや親子関係のもつれが読者にも明かされていく。思春期特有の友達関係や自己顕示欲や不安定さが上手く描かれていて、納得しながら読み進められる作品だった。ただ、面白いけどずっと心に残るような作品ではないというのが正直なところだ。ラスト、子どもを殺された母親というのは、やっぱりここまで・・・と暗い気持ちになった。


⑦東京島  桐野夏生
 ★★★☆
夫と二人でクルーザー旅行中の清子(46歳)はクルーザーの転覆により、無人島に流れ着く。その後、同じく流れ着いた日本人や中国人たちとの島での生活が始まる。無人島は「トウキョウ島」と名付けられ、ブクロ、ジュク、シブヤなどと地名が付けられていく。女は清子一人。衰弱した夫は「サイナラ岬」から転落死し、2年交代で清子の夫が島の男たちから選ばれることになる。清子は自分を中心に島の若い男たちが生活していることに喜びを覚えていくが・・・・・って感じのストーリーである。読み始めはストーリーの設定自体が興味深くて、ひたすら読み進めたが、後半は展開が乏しいというか面白みがないというかで、やや読み飽きてしまった。たぶん、わたしの期待が大きすぎたのだろう。この本はメディアでも度々取り上げられていて、ずっと読みたいと思っていた本だったから。そうだ、短編にすればいいのかもしれない。半分くらいに削って、ぎゅっと詰め込むと序章の興奮が冷めないうちに一気にラストに辿り着く。そうやって読みたい本だったなあ。


⑥ノルウェイの森(上下)  村上春樹
 ★★★★
映画化されるというので、久々に読もうと思った。この本を手にするのは約20年ぶりになる。最初に読んだのは高校生の時だった。再読する前は、高校生に村上春樹が分かるのか?と思ったが、最後まで読んでみて、経験や歳を重ねれば分かるモノではない(そういう本もあるが)、自分の感性が村上春樹にリンク出来るか否かだと思った。読み始めて、やばいと思った。面白さが分からなくなっている自分に気づいたからだ。読みながらウトウトしてしまうのだ。おかしいな・・・村上春樹の本は結構読んでいるんだけど・・・「ねじまき鳥クロニクル」や、「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」や、他にも面白くて好きだった本はたくさんある。
やっと上巻の後半、直子の療養所にワタナベが行くところあたりから、わたしも入り込むことが出来た。この話には、自殺する人が何人も出てくる。そして、死は生の(あるいは性の)一部で、つながっているというくだりが何度か出てくる。そして精神を病んでいる直子やレイコを通して、何がまともでなにがまともでないのか読者も探ることになる。緑だけが現実を生きている「生」の象徴で、ワタナベは直子と緑の間を行き来して、二人に誠実であるように苦悩するのだ。
ストーリーがいいというよりは、台詞が衝撃的だったり、心の隙に入り込むような言葉だったりして、錆び付きかけてるわたしの感性をつついてくる。もちろん、リアリティがあるストーリーではないが、強く印象を残す一冊だ。


⑤ゴールデンスランバー  伊坂幸太郎
 ★★★★
第5回 本屋大賞 、第21回 山本周五郎賞受賞作品。伊坂幸太郎の本は、世間の高い評価に反してわたしの評価は低かった。けど、この作品で考えを改めることになった。数年前に読んだ「陽気なギャングが地球を回す」「ラッシュライフ」など文章が軽すぎて、あるいは派手すぎてなんだかしっくりこなかったし、内容がないよう!と思っていた(ごめんなさい)。それでしばらく伊坂幸太郎からは離れていたが、偶然にも良く利用する図書館でこの本に出会った。本との出会いも一期一会だからね、と思って借りてみたのだ。
 舞台は仙台。首相のパレードが開催される中、ラジコンヘリによる爆弾を使った首相の暗殺が起こる。犯人として追跡される男、青柳。証拠はきっちり揃っている。が、この男は犯人ではない。ここから青柳の逃走劇が始まる。気が利き過ぎているくらい伏線が張られていて、後半は、はあーなるほどねえ、これか!と感心するほど。ちょっとキザな感じがあるのは著者の好みなのかな。やっぱり文章は軽めなんだけど、ストーリーの軸がしっかりしているせいかあまり気にならないし、それがこの若者の逃走のスピード感にも合っているとも思う。「悪人に見えないやつに限っておまえの敵なんだよ」と青柳が友人から言われた一言によって、読者も逃走犯の心境になってしまうし、青柳を応援したくなってはらはらしながら一気に読んでしまう本だった。なかなかよかった。仙台が舞台なんて、めずらしいと思ったら著者は東北大学卒だった。なるほどね。


④脳男  首藤瓜於
 ★★★☆
200年江戸川乱歩賞受賞作品。連続爆弾犯のアジトで捕まった感情のない男、鈴木一郎。この男には想像を超えた過去があり、更に恐るべき能力を兼ね備えた男でもあった。そして、この男の精神鑑定をする為に入院している病院で事件は起こった。
茶屋という刑事の人物が、ずば抜けて体が大きく乱暴だという単純な設定が、なかなかに場面場面にメリハリを与えている。ほとんどが病院の中でのストーリー展開で、平坦になりがちな描写に茶屋が現れると、なんとなく引き締まる感じがするのだ。贅沢を言えば、茶屋のプライベートや同僚かなんかの話を組み込むと茶屋の行動にも説得力が出てきて、鈴木との関わり方にも深みというか読み手の納得感が増す気がするのだが。ストーリーの中心となる女医の設定も”アメリカ帰りで若くて美人で”、とありきたりだが嫌みがなく、読みやすい。いや、読みやす過ぎるのか。癖がなくて物足りない感があるのは私だけだろうか。


③センセイの鞄  川上弘美
 ★★★☆

谷崎潤一郎賞受賞作品。居酒屋で高校の恩師と偶然に再会したツキコ。二人は約束を交わすこともなく別れるが、なじみの店で何度も再会し、一緒に酒を飲み憎まれ口を叩き合う。そして年の差を超えて同じ時間や空気を共有し、お互いを想うせつない時間が流れて行く。
ツキコは30代後半、センセイは70代前半くらいの設定で、恋愛の対象にしてよいものかお互いに悩みつつ、着かず離れずの距離を保つ。センセイの真意は途中まで明かされないので、ツキコの独りよがりの気持ちが微笑ましくもあり、気恥ずかしくもある。ツキコと同年代の自分と重ねて読んでしまうからだろう。ラストの「センセイと過ごした日々は、あわあわと、そして色濃く、流れた。」この一文が全体を凝縮し、この小説を引き締めている。酒と肴の描写がよく出てくるので、飲みたい気分になってしまう小説でもあった。それと、この書体(なんというのか分からないけど)もこの小説とよく合っている。

②葉桜の季節に君を想うということ  歌野晶午
 ★★★☆

2004年の「このミス」や「本格ミステリ」等で1位をとった作品。
元私立探偵の成瀬は、悪質な霊感商法の調査を依頼され、偶然に自殺を救った麻宮さくらや妹・綾乃と共に蓬萊倶楽部の調査を始める。調べが進むにつれて蓬萊倶楽部の実態を掴み始めて・・・そして最後に「ええっ!?マジで!」と読み手はまんまと騙されていたことが判明する小説。わたしもあっさり引っ掛かってしまった。そりゃあ作者が騙すつもりで書いてるんだから仕方ないけど、なんかすっきりしない騙され方だった。ヤクザに成り済まして潜入捜査をするところなんかは、なかなか面白かったし、ストーリー自体も悪くはないんだけど・・・。最後のオチに頼りすぎてて、そこに辿り着くまでの雑さとか甘さが感じられたからかなあ。もう一回、オチを踏まえた上で読み直したい気はするけどね。


①流雲の賦(上下)  村上元三
 ★★★

南北朝時代から戦国時代まで(途中二百数十年抜けるが)の、大三郎という下人(のちに足利家に取り立てられる)の立場からみた歴史モノ。足利尊氏、楠木正成などの歴史を動かして行った人物の陰で、自分の育った地元の石動山(天平寺)を戦火から守る為に命をかける大三郎とその子孫たちを軸として話が展開する。立場や地位の違う人物達の駆け引きや、強大な権力を持っていた寺が絡み、混乱していたこの時代。この混乱が読み手にとっては魅力的だ。様々な人物が、己の欲望や何かを守る為に奔走し死んで行くという、太く短く生きる男たちの姿に魅せられてしまう。ただし本書は派手な脚色はなく、地味な作品だ。著者の堅実な、誠実な姿勢が反映されている。ややマニア向き。

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